思い当たったもうひとつの原因は、両面テープを貼るために製品に縫いつけた『テープベース』と呼ばれるナイロン製の布だ。楕円形で、わずかコインふたつ分くらいの大きさ。本当は額の中央に一枚でいいのだけれど、まだクリーナーをうまく使えず、安定しないのが不安だったため、額の中央とその両脇に計3枚縫いつけたもらったことがある。湿疹が出始めたのは、その後からだった。
頭に、かつてアデランスを使っていたころ、いつも頭皮に吹き出物ができていて、家内に言わせれば痛々しい状況だったのを思い出した。僕は当時、かさぶたを爪ではがすのを悪しき日課にしていた。はがしてもはがしても、なくなることがない。それほど頭全体に吹き出物ができていた。それはたぶん、密閉性の高いカツラのベースのせいだろうと思う。素材は微妙に違うが、同じように化学的な製品。たぶん僕の頭皮は密閉度が高く汗がたまりやすい素材に弱いのではないか、それが最も有力な原因だと僕は絞り込んだ。
テープを使い始めて少し経ったころ、困った問題が起きました。これは、僕がスヴェンソンを使って6年目に初めて直面した、ちょっとしたトラブルでした。額まで編み込みをしていたときにはまったく発生しなかった湿疹が、両面テープにしたら少し出始めたのです。主に額のところ。原因はまずふたつ考えられました。「両面テープが皮膚に合わない」「クリーナーが皮膚に合わない」。僕としては、元々不安を感じた「クリーナー」が一番有力な湿疹の原因だと察しをつけました。そこで、粘着力が落ちるのを覚悟の上で、クリーナーを使わず数日過ごしました。しかし、湿疹は治まりません。となると、両面テープだろうか。これは貼らないわけにいかない。数日経って、ふと、もうひとつ、「これが原因ではないか」と思える原因に思い当たりました。(続く)
額を編まないメリットも確かにあります。髪を洗うとき、手を入れて地肌を直接洗える、製品の上からのブラッシングに満足できなかった人にはこれが最大の利点でしょう。僕の場合は直接洗えないストレスをそれほど感じていませんでしたから、実はそれほど感動はしていません。「あ、指で洗えるね」って程度かなあ。前を上げて、シャワーをパーッと地肌に向かって当てるとき、何となく開放された感じはするから、それはそれでやっぱり快感かもしれません。
ひとつ注意すべきは、乱暴に扱うこと。僕は当初グイグイ手を入れて頭頂部を洗って、編み込んであるところを引っ張る形になり、左右のこめかみ部分、編み込んであるところが少し緩んでしまったことがあります。編み込みの遊び(緩んでいる具合)に応じて手を入れないといけない、それを忘れていました。
両面テープが頼れるツールだとわかって、僕は身を入れて貼り方に取り組むようになりました。技術者から何度言われても「億劫だな」と感じて取り組まなかった『裏紙テクニック』も本気で練習。両面テープに貼ってある紙の片面をまず剥がして、その一角に予め作って置いた小さな三角形の紙を貼るのです。紙は以前剥がした裏紙を使用。これを一角に貼ると、ベースから両面テープを剥がすとき、ここをつまむことができるので爪の短い僕でも楽々剥がせるわけです。
僕は3、4ヵ月に一度くらい、大量にこの小さな三角形の紙を作り、小さな透明容器に入れてあります。洗面所に脱脂綿、クリーナー、両面テープ、三角形の裏紙を常備しておけば、時間にしたら1分、かかっても2分で貼れます。慣れてしまうと意外と簡単、と、慣れてからわかりました。指先の細かい作業ですし、最初は両面テープの紙を剥がすのもうまく行かずイライラしたこともありますが、コツをつかめたら楽になりました。
そりゃもちろん、額も編み込んである方が便利です。何もしなくていいのですから。
僕が本気で両面テープを使い始めたきっかけは、小さな驚きことからでした。何事も、僕は自分が実感しないと身体が動かない質(たち)みたいです。
一番最初にスヴェンソンを訪ねたとき編み込み式の説明してくれたアドバイザーと会う機会があったので、「両面テープ、よくくっつかないんですけど」、カツラを動かす真似をしながら問いかけました。すると、「おかしいですね、僕なんかほら、こんなにガッチリ着いていますよ」、両面テープの愛用者である彼が頭を突き出しました。遠慮なくカツラを引っ張ってみると、「本当だ」思わず声を上げるほどガッチリくっついて、ちょっとくらい引っ張っただけでは外れない、確信を抱くほどの強い接着感でした。
「どうして?」「小林さん、ちゃんとクリーナー使ってますか?」「いやあ、あれ、匂いがあって、身体に悪そうなんで」「大丈夫ですよ、肌に使う目的で作っている製品ですから。あれで脂を取らないと着きはは悪いですよ。小林さん、けっこう脂性だし」「はあ、わかりました、やってみます」
翌朝、言われたとおり、脱脂綿にクリーナーをつけ、それでテープの当たる額部分を綺麗に拭き取って着けてみた。時間が経てば経つほど、「どうしてこんなにガッチリくっつくちゃうの?」というほど安心な接着感を初めて実感した。それ以来、クリーナーを愛用。両面テープの扱いに真剣に取り組むようになった。
額の部分が編み込めなくなって、両面テープを使い始めたのは2年前。最初はテープを貼るのが面倒くさくて、2ヵ月くらい、編み込んだ当初はテープを使わず開けたままにしていました。それでも結構大丈夫でした。
面倒だった理由はいくつかあります。
1)僕は爪を噛む癖があり、すごい深爪なのです。だから、朝、前日貼ったテープを剥がすのが大変。爪がないから、スタジオでピッタリくっつけてもらったテープがなかなか剥がせない。いらいらして、それを考えると貼るのが面倒だったのです。
2)技術者の女性から、剥がしやすい方法として、テープの一角に小さく切った裏紙を貼る方法を教わったのですが、「食わず嫌い」みたいなもので、「そんな細かなこと、僕にできるわけがない」と決めつけてしばらく練習もしなかったのです。
3)テープを貼る前に地肌をクリーナーで拭いてください、と指導されたのですが、クリーナーに匂いがあったので、身体に悪そうな気がして使いたくなかった。それで、ただ脱脂綿で地肌を拭く程度で接着していたのですが、するとテープの着きが悪い。すぐ剥がれてしまう。だから両面テープはあんまり役にも立たないと思って、経験したのです。
これらをどう乗り越えたかについて、順次連載でお伝えします。
スポーツライター塾の若者たちに誘われて、真剣にスポーツで汗を流しました。スヴェンソンに替えてから、子どもとプールに行ったり、相撲を取ったり、空手を始めたり。色々スポーツに挑戦しました。が、ここまで必死に走り、汗を流したのは久しぶり。不自由なカツラにしてからは初めてでした。
公園でまずフットサル。3分で死にそうでしたが、気合いを入れて1時間やりました。転んだり、跳ねたり、でもカツラは大丈夫。体育館に移ってバレーボールを1時間半。へなちょこアタックですが、以前の金具式アデランスなら、上を向いてボールを打つなんて考えられない。ましてや回転レシーブなんて、頭を押さえながらじゃなきゃ絶対無理。頭を押さえながらの回転レシーブなんて絶対無理。つまり、バレーボールをやること自体、考えられません。突然ボールが頭をかすめたらそれこそカツラが吹っ飛ぶ恐怖あり。
そのあとバドミントンまでやりました。細かなジャンプの繰り返し。ダッシュして低いシャトルを懸命に拾ったり、勢い余って転んだり。編み込み式だからできる、髪の不自然な乱れを心配せずにできる。
本当に久しぶりに身体をここまで動かして、ようやくスポーツライターの原点に戻れた気がします。
6月15日、大阪で髪ングアウト・ミーティングを開催の予定でしたが、締め切りの今日になっても申込みがありませんでしたので、残念ながら今回は見送らせて頂きます。いつかまた関西でも集まれるよう、楽しみにしています。
明日テレビの取材を受ける関係で、アデランスを使っていたころの写真を探したり、もうずっと使っていないカツラを引っ張り出したりしました。それをディレクターから求められたからです。カツラって、頭に乗っているのと、単体で見るのとでは情け無さが違います。やっぱり、カツラだけポンと机の上にあったりするとやっぱり滑稽です。そのスタイルが自然かどうか、だけでなく、やはり外れて単体になってしまうカツラと、いつもは頭の上に乗っていて、パカッとは取れないカツラの違いというのは、理屈抜きに安心感、上品さみたいなものが違うと感じました。
大阪での髪ングアウト・ミーティングは、かねてお知らせの通り、6月15日(火)を予定しています。時間は夜7時頃から、場所は申込者に追って連絡します。会の前半はスヴェンソンの技術者の方をゲストに迎えて『スタイリング向上委員会』。後半は懇親会を予定しています。会費は懇親会の費用として5000円前後。参加申込みは6月10日(木)までにお願いします。申込は、club@team4u.jp まで。